相続放棄する場合の納骨の費用
1 納骨費用とは
遺骨をお墓などに埋葬する「納骨」は、当然のことながら、無料ではありません。
墓地や納骨堂への遺骨の埋葬にかかる納骨料や、故人の戒名などを墓誌に彫刻する費用である彫刻料などの費用がかかります。
また、新たにお墓を購入する場合には、その費用もかかります。
このように、納骨するには、相当の費用を要します。
2 納骨費用を遺産から捻出してよいのか
納骨の費用を誰が支出するのか、定めはありません。
そのため、相続人で分担することもできますし、被相続人の遺産から捻出することもできます。
3 相続放棄する場合、納骨費用を遺産から捻出しても問題ないのか
上記のように、納骨費用を遺産から捻出することは可能です。
ただし、相続放棄をする場合であれば、注意が必要です。
被相続人の遺産から納骨費用を捻出した場合、遺産を処分したとして「単純承認行為」に該当するとされ、相続放棄ができない場合があるためです。
この点、納骨費用ではなく、葬祭費用ですが、遺産から葬祭費用を捻出した事案に対する決定(大阪高決平成14年7月3日)があります。
同決定によれば「預貯金等の被相続人の財産が残された場合で、相続債務があることがわからないまま、遺族がこれを利用して仏壇や墓石を購入することは自然な行為であり、また、本件において購入した仏壇及び墓石が社会的にみて不相当に高額のものとも断定できない上、それらの購入費用の不足分を遺族が自己負担していることなどからすると遺産の処分に当たるとは断定できない」と判断されています。
これによれば、社会的にみて不相当に高額でなければ、すなわち、一般的に相当な範囲内での葬祭費用であれば、遺産から捻出しても相続放棄ができるように思われます。
ただ、上記決定は、購入費用の不足分を遺族が自己負担していることも考慮されていますし、また、本来的に見れば被相続人の遺産を使用することは遺産の処分に該当し「単純承認行為」に該当します。
そのため、上記決定があるからといって、遺産から納骨費用を捻出しても相続放棄には問題がないとは言い切れません。
相続放棄を考えている場合には、被相続人の遺産から捻出するか否かは一度よく検討する必要があります。






















